Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

リチャード・A・シュミット『運動学習とパフォーマンス:理論から実践へ』大修館書店

第1章 運動パフォーマンスと学習への入門

学習目標

  1. 多様なスキルとその構造を評価すること
  2. スキルの定義の多くの側面を理解すること
  3. いくつかのスキルの分類を認識すること
  4. テキストの構成を理解するとこ。そして運動パフォーマンスは学習によって生じるということも理解すること
スキルに関する知識の応用
スキルの定義

スキルとは,最高の正確さで,またしばしば最少の時間とエネルギーあるいはらこれら両者の消費で,あらかじめ決められた結果を生じるように学習された能力である。(E.R.ガスリーの定義)

スキルの多くの要素

次の3つの要素は,どのスキルにとっても重要:

  • 関係した環境の特徴を知覚する
  • 何をすべきか,それをどこで,いつすべきかを決定する
  • 運動を発動するために,組織化された筋肉活動を行う

スキル研究は,いくつかの分野にまたがる:

  1. 感覚あるいは知覚過程は,認知心理学や精神物理学で研究されている
  2. 意思決定過程は,認知心理学や実験心理学で
  3. 運動制御や運動の産出過程は,神経生理学,キネシオロジー,生体工学,バイオメカニクス,体育学,生理学などで
  4. 学習過程は,キネシオロジー,体育学,教育心理学,実験心理学などで
スキルの分類

開放スキル(open skill)と閉鎖スキル(closed skill)。環境がパフォーマンスを通してどの程度安定し予測できるか。予想できる環境が前者(体操わアーチェリーなど),できないのが後者(サッカーやレスリングなど)。

分離スキル(discrete skill)と連続スキル(continuous skill)と系列スキル(serial skill)。短期間のうまく定義された行為とは逆に,どの程度その運動が行動の連続した流れにあるか関係したもの。例は順に,射撃,クルマの運転,体操の規定種目。

運動スキル(motor skill)と認知スキル(cognitive skill)。運動の質が重要か,遂行すべき運動の決定が重要か。たとえば,走り高跳びとチェス。

パフォーマンスと学習の理解

概念モデル(model)。受容器を通ってシステムに入ってくる情報がいかに処理され変換され貯蔵されるか。この感覚情報が意思決定と行為の計画に関係した他の過程をいかに導くか。

第I部 人間の熟練パフォーマンスの原理

第2章 情報処理と意思決定

学習目標

  1. 人間の多様な情報処理の仕方を理解すること
  2. 反応時間と意味とそれに影響を及ぼす要因を理解すること
  3. 注意がどのようにパフォーマンスに影響するかを理解すること
  4. 人間のパフォーマンスにかかわる原理を教授・コーチングする場面に応用できるようにすること
情報処理的アプローチ

人間のパフォーマンスの情報処理的アプローチ:入力→人間→出力

(〈人間〉内における)情報処理の段階:

  • 刺激同定(stimulus identification):刺激が呈示されたかどうか,されたとしたらそれが何かを判断すること
  • 反応選択(response selection):寄与の環境の性質に応じてどのような運動を実行すべきかを決定すること
  • 反応プログラミング(response programming):目標となる運動を実行するための運動システムを組織すること
反応時間と意思決定

反応時間(reaction time: RT):意志決定の速さとその有効性を示す重要なパフォーマンス測度のひとつ。

一般に,選択可能な運動の数が増えるにつれて,どの運動に反応するにせよ反応に要する時間,すなわち反応時間は徐々に長くなる。

刺激-反応選択肢(stimulus-response alternatives)の増加に伴う反応の遅延は,熟練パフォーマンスを理解する上できわめて重要であり,ヒックの法則(Hick's Law)のちゅうしんを成している。

ストレスとそれが生起させる興奮の水準を意味する覚醒(arousal)は,スキルのパフォーマンスでは同じものとして取り扱われる。

覚醒のパフォーマンスに対する重要な原理,逆U字原理(inverted-U principle)として知られている。つまり,覚醒水準が低い水準から徐々に上昇するにつれてパフォーマンスも増加していくが,それは中程度の覚醒水準でピークに達し,覚醒水準がさらに上昇するとパフォーマンスは逆に低下しはじめる。

さらに,覚醒がパフォーマンスに及ぼす影響は,スキルの種類によって左右される。つまり,認知的複雑さが高いほど(たとえばアーチェリー)最適な覚醒水準は低く,単純なほど(例えば重量挙げ)最適な覚醒水準は高くなる。←運動制御が小筋か大筋か

知覚的狭隘性は,高い覚醒下において課題の遂行に必要な手がかりへの反応を促進させ,不必要や手がかりへの反応を排除する重要なプロセス。

注意と人間のパフォーマンス

人間が環境からの情報を処理できる容量,あるいは注意(attention)を配分できる容量に限界があると考えられる。

二次課題に配分される注意は,主課題が複雑になるにつれて減少する。

情報は連続的かつ並列的にシステムに入るが,その反応としての運動は系列的に実行される。

3つの記憶システム

記憶(memory)はスキルを考える上で重要な概念であり,一般に,これまで議論されてきた各情報処理段階での処理結果の貯蔵と考えられている。

  1. 短期感覚貯蔵(short-term sensory store: STSS)。環境からの感覚情報を記憶すること。貯蔵時間は最大で1/4秒前後。

  2. 短期記憶(short-term memory: SST)。保持できるのは,情報のチャンクと呼ばれる項目で7±2個。

  3. 長期記憶(long-term memory: LTM)。情報ほ保持できる時間は無制限。

第3章 熟練パフォーマンスに対する感覚情報の寄与

学習目標

  1. 人間のスキルに関連する閉回路モデルの寄与と限界について正しく認識すること
  2. 運動における感覚情報のさまざまな使われ方を理解すること
  3. 運動制御におねる感覚の特殊な役割に慣れ親しむこと
  4. 行動に対する感覚の貢献を加えることにより運動制御の概念モデルを発展させ続けること
感覚情報源

スキルに関する情報の基礎的情報源:外受容感覚(exteroceptive)と,固有受容感覚(proprioception)=運動感覚(kinesthesis)

〈実践的応用〉

  1. 受動的な補助手続きは,教授現場における運動の実演には有用だが,その多くは運動感覚を歪めるので控えめに用いるべき。
  2. ある特定の運動課題に関し,最も重要な感覚情報を選手に知らせることは,最も重要な情報に焦点を合わせることになる。
  3. 運動後に,受け止めた感覚を学習者に表現させることは,感覚情報に注意を払わせ,正確な運動の感触を高める。
閉回路制御システム

すべての閉回路制御(closed-loop control)システムは,次の4つの独立した部門からなる:

  1. 誤差に関する意思決定を行う実行部
  2. 決定を実行に移す効果器
  3. 誤差を検出するため,フィードバックされた結果を比較する正確さの基準
  4. 誤差信号,これは実行部に働きかける情報である
概念モデルにおける閉回路制御系

「ゴルフにおいて効果的にドライブがかかったときの感触」? 原文はなんなんだ?

インストラクターに勧められているのは,学習者が運動の特定部分に“集中し”,特定の情報源からのフィードバック起源に“焦点を合わせる”よう示唆すること。→ガルウェイ『テニスのインナーゲーム』では,運動の“流れ”に任せることを強調している。論点は,“最後のパフォーマンスは,意図的な過程に干渉されるよりは,むしろ学習によって培われた運動システムの能力に行動の制御を任せたときだけ起こると考えられる”ということである。

運動において意図的な処理過程に過大に依存することは,“分析による運動マヒ”と名付けられた結果をもたらし,これは熟練パフォーマンスにとっては明らかに効果的ではない。

視覚制御の原理

運動制御に関するふたつの視覚システム

  1. 中心視(focal vision)システム:〈それは何だ〉という一般的な質問への答えを提供
  2. 周辺視(ambient vision)システム:〈それはどこにあるのか〉〈それに対して私は何処にいるのか〉という質問に回答を与えてくれる

ゴルフボールは打つまでは決してどこにも行かないのに,どうして視覚情報がスイングに役立つのであろつか?→バランスにおける〈オプティカルフロー〉「関する変数の役割は,この質問を理解するのに役立つをスイング中,ボールに対して頭を一定に保つのは非常に重要なことである。ここでは,頭の位置の微細な変化が〈オプティカルフロー〉情報によって信号化される。バックスイング中に生ずる頭の微細な後方運動はすぐさま知覚される。そして,これらの意図していない運動を補償するため,筋活動に小さな変化が起こる。

第4章 運動算出と運動プログラム

学習目標

  1. 運動と開回路制御の概念を熟知すること
  2. 運動プログラムと合理性とその特性を理解すること
  3. 新奇性と柔軟性を持ったプログラムの一般化を行うにはどのようにしたらよいかを理解すること
  4. プログラミングの原理を実際の運動場面に応用すること
運動プログラム理論

開回路制御(open-loop control)システムの特徴

  • 特定の先行指令は,行うべき操作,その系列化,およびタイミングを生じさせる。
  • 一度プログラムが始動すると,修正なしで,指令のままにシステムは働き続ける。
  • フィードバック機能がどこにも備わっていないので,エラーの検出とその修正能力はない。
  • 指令の修正の必要性がなく,安定した予測的な環境で最も効果的に機能する。
開回路制御の概念モデル

〈実践的応用〉

  1. 前もってプログラムされた運動の崩壊を阻止するために,学習者にすばやい運動のいろいろな側面に注意 を向けさせることは避けるべきである。
  2. 効果的な開回路学習の促進をするために,自動的に運動が遂行され,流れていくように学習を指導しなければならない。

予備的姿勢調節:腕を横に下げた状態で立っているとき,被験者に実験者が腕を頭の目標点まですばやく振り上げるように指示するをこのとき,この運動の遂行に関連して最初に活動する筋は,肩の筋肉群ではなく,背中の後背部や足である。

一般運動プログラム
  • 貯蔵の問題(storage problem):将来使用するために,どのようにそしてどこに,人は無数の運動プログラムを蓄えているのか。
  • 新奇性の問題(novelty problem):運動の実行者は,すでに蓄えられている運動プログラムにはらない新奇な運動をどのようにして作りだしているのか。

〈実践的応用〉

  1. 学習者には,彼らが新しい運動パターンを学習することなく,多くの新しい運動の目標に出会ったら,すでに習得している運動パターンをたやすく修正さて実行ができることを強調すべきである。
  2. 運動の柔軟性の考え方を強調することによって,学習者に,学習する運動を早めたり遅くしたりさせてみなければならない。
  3. ゴルフのきわめて短いショットに合うスイングを行うには,学習者にスイング全体の大きさを短くするようにさせなければならない。
  4. 環境内条件と,運動の大きさおよびスピードとの関係に注意を払うように学習者を指導しなければならない。
  5. パラメータと発揮される運動の結果との関係が,次に行う運動を決定するために有効であることを知らなければならない。

第5章 運動制御と運動の正確性についての原理

学習目標

  1. 運動制御における不変性(invariance)の概念を理解すること
  2. 運動の速度および距離の正確性への影響を理解すること
  3. 急速運動に生じる不正確性の基本的原因を理解すること
  4. 急速動作の原理を実際の運動場面に応用すること
一般運動プログラムの不変的特徴

ある運動の表面的特徴(運動の速度,大きさ,負荷)が変化するとき,その運動のさまざまなパターンのうちどういった特徴が一定不変であるのか?

運動とほとんどすべての特徴が変化するとしても,その運動の特定の特徴だけが普遍であるとすれば,その特性こそが,さまざまなに変化しうる運動の基本パターンとしての一般運動プログラムの本質的特徴を示しているといえるかもしれない→不変性(invariance)

ある運動課題を異なるパラメータ特性(速度の遅速,移動距離の大小)のもとで行う場合でも,被験者は同じ時間構造にしたがって運動を行うという傾向が認められており,相対タイミング構造を変えるのは不可能(少なくとも被験者は変えたがらない)のようにも思われる。

インストラクターが学習者に対して,同じ動作の一部分のみを修正するように教示しがち(例えばゴルフスイングでバックスイングどけをゆっくりするなど)だが,このような動作修正は,一般運動プログラムを部分的に変えようとすることを意味しており,極めて困難。

運動系は一般運動プログラムに基づいて作動しており,その動作修正は毎回の動作ごとに(パラメータ調整により)運動全体として行われる。難度の高いある動作部分を省くことによって動作の修正を行うということは,まずほとんどありえない。熟練動作の矯正が非常に困難なのは,ひとつにはこういった理由がある。

〈実践的応用〉

  1. ある動作を学習するときは,多様なパラメータ(例:運動時間,距離,方向など)で練習を行い,パラメータ調整能力を獲得すべき
  2. 学習の初期は正しい運動パターン(相対タイミング)の獲得を目指し,正しい運動速度や大きさ(パラメータ調整)を過度に強調すべきではない
  3. 相対タイミング学習が難しい学習内容であることを理解すべき。一度正しい相対タイミングを獲得すれば,その後のパラメータ調整学習は容易にできる。
  4. 熟練した相対タイミングパターンの矯正は困難なので,パターン矯正は学習の初期段階で行っておくべき。
急速運動の正確性を決定する要因

フィッツの法則

  • 運動時間は,運動距離(A)ご増大するにしたがい延長するが,それはわずかなもの
  • 運動時間は,要求される正確性が高まると,すなわち標的幅(W)が減少すると,延長する
  • 運動時間は,Wに対するAの比が一定であれば,本質的には一定
  • これらの原理は,運動の環境,人,身体部位の違いなど,異なる条件下においても妥当性がある

急速運動において速度を増大させるとなぜ正確性が低下するのか?

  • 運動に動員される多くの筋の相対的な収縮力は,最終的な動作肢と軌道を決定する主たる要因である
  • 発揮される力が増大すると,これらの収縮力の変動も増大する
  • 運動時間を短くするには,より強い力が必要
  • 運動距離を大きくするときは,より大きな力が必要
  • 力を増大すれば変動性も増大し,その動作は意図した軌道からばすれ,結果として誤差を生じる

運動が非常に高水準の筋収縮(被験者の能力の70%以上)を必要とする場合,

  • 運動時間の短縮による速度の増大は,空間的エラーおよびタイミングエラーを減少させることができる
  • 運動に重量負荷を加えると,ある程度まで,エラーを減少させることができる
  • 空間的正確性と要求される力の発揮水準の間には逆U字関係が存在し,中間的な力発揮水準における正確性が最も低い。

〈実践的応用〉

  1. バッティング練習者に,スイングをゆっくりと行って“ボールを捉える”ように教示することは,バッティングパフォーマンスの低下につながるだけなので避けるべき
  2. 最大スイング速度があまり落ちない範囲で,バットの重量を重くすると,バッティングの空間的正確性を高めることができる
  3. バットはできるだけ速い動作でスイングさせるのがよい。ただし,速すぎて動作がぎこちなくなっあり協応性が損なわれるこのがないようにする

第6章 個人差と運動能力

学習目標

  1. 個人差の考え方を理解すること
  2. 運動能力の基本的性質に精通すること
  3. スキルを分類するために能力と概念を使用すること
  4. スキルを予測することに関して,その方法と問題点を理解すること
個人差の研究

個人差に関するふたつの大きな要素:

  1. 能力:熟練したパフォーマンスの基になる資質や特性と,これらの能力がどのように人々の間のスキルの差を説明するのか
  2. 予測:種々の職業やスポーツにおいて成功する見込みがあるか否かを評価するため,人々が能力を用いる過程
能力と性能

能力(ability):遺伝的で,かなり永続的で,安定した特性→視力,色覚,体格,数の能力,反応速度,手先の器用さ,運動感覚の感受性,多肢協応性,空間的定位など,およそ20-30の認知および運動の能力が今まで確認され,最終的には50は発見されるだろう

能力に対してスキルとは,練習とともに発展し変容し,その数は数え切れず,そしていくつかの能力に依存するもの

〈実践的応用〉

  1. 人々の間に差があることを認めて,正しく判断することは,ある人に対してあるスポーツ活動を行うよう,また行わないよう勧めることに役立つ
  2. あるスキルをほんの数回だけ観察して,あまりにも早急に個人差を判断すべきではない。これは遂行者が初心者ならなおさら
  3. 安定した個人差を検出することは,高い変動性(あるいは偶然性)を持つ課題においてはきわめて困難。それゆえ,試行回数を数多く行う必要がある
  4. 能力の不足を補うために練習を勧めるべき。しかし現実的でなければならない。というのは,スポーツで最もな高いパフォーマンス水準を得るには,それに応じた分野にきわめて高い能力が要求されるから
スキルの分類と課題分析
予測と選択

〈実践的応用〉

  1. 有効なパフォーマンスに導くテクニックを学習するため,可能な限りチャンピオン・パフォーマーにインタビューすべき
  2. 非常に熟練した選手たちでさえ自分自身がどのように遂行しているかを知らないので,故意ではないにしても,あなたに誤った情報を与えているかもしれない。そのため,これらのインタビューからあなたが学ぶことは何かということについて慎重になるべき
  3. 基本的能力とその測定方法についてよく知るべき。そうすれば,あなたは特定の活動に強い(弱い)能力を持つ人たちを見極めることができる
  4. もしあなたがなにかの能力(譬えば腕の運動速度)がある課題にとってきわめて重用であると知ったら,学習者にこのスキルの特徴を強調するべき(「この瞬間にもっと速くしろ」)

第II部 スキル学習の原理

第7章 運動学習:概念と方法

学習目標

  1. 運動スキル学習の概念を理解すること
  2. 学習の測定におけるいくつかの問題点を認識すること
  3. 学習の転移がどのように学習一般とかかわっているかを学ぶこと
  4. 学習の測定原理を授業場面に応用すること
運動学習の概念

運動学習(motor learning)とは,熟練パフォーマンスの能力に比較的永続的変化を導く練習や経験に関係した一連の過程

運動学習をどのようにして測定するか

練習はパフォーマンスに対して2種類の異なる影響を持つ:

  • 学習による比較的永続的な効果→本質的には,これらの比較的永続的な変化の発達を最大にする練習条件を見いだすことに関心があり,そのためこれらの条件は,学習を促すさまざまな練習場面で用いられる
  • 一時的で一過性の効果

保持テスト(retention test):練習から日数をあけ,学習による効果が残っているかをみる

学習の転移(transfer of learning):ある課題や場面で達成された学習を他の課題ーーこれは通常,基準課題と呼ばれるーーに応用することに関連している

転移のための授業や学習の転移を促進するための練習の組織化と教示は,ほとんどの指導プログラムの重用な目標

第8章 練習計画のための準備と戦略

学習目標

  1. 学習量を決定する 練習の特徴を理解すること
  2. 練習前の教示と実演の役割を十分に理解すること
  3. 有効な身体的な練習とメンタル・プラクティスを特徴づけ重要な変数を学ぶこと
  4. これらの原理を多く実践的練習場面に応用すること
学習段階

学習過程で同定できる3つの相対的に異なる段階:

  1. 言語−認知段階(verbal-cognitive stage):課題は学習者にとって全く新しいものである状態。重要な問題は,目標の同定,パフォーマンスの評価,行うべきこと,行うべきでないこと,それを行う時,立ち方,または道具の握り方,見るべきものなどについて。教示,実演,フィルム・クリップと他の言語的(または言語表現の可能な)情報もまた,この段階では特に有益。→学習者ななすべきことおよび目標は何かを決定する。改善は速やか。運動はぎくしゃくしていて,ばらばらであり,既習の学習に基づいている。意思決定過程と自己会話が支配的。注意要求は非常に高い。
  2. 運動段階(motor stage):ほとんどの認知の問題は解決されており,今や学習の焦点は動作を作り出す,より有効な運動パターンの組織化に移行する。一般的にこの段階は言語−認知段階より長く続く。多くのスポーツ・スキルにとっておそらく数週間もしくは数か月を費やし,学習者が困難を感じるともっと長くかかる。→学習者は,活動のために特定の運動プログラムを発達させ始める。運動の一貫性が急激に増大する。予測能力とタイミングは向上する。自己会話は減少し始める。パフォーマンスの上達は第一段階よりも幾分緩やかになる。
  3. 自動化段階(autonomous stage):ここでは運動プログラムはよく発達し,相対的に長い時間の動作を制御できる。この段階は,環境パターンの感覚的分析の自動性を増大させる。→学習者は非常に熟練している。注意要求は大きく減少する。運動と感覚的分析は自動的になり始める。パフォーマンスの戦略的側面とかスタイル面が強調される。そして,スキルの向上は継続しているが相対的に緩やかである。
練習前に配慮すべき点

言葉の教示(instruction)は,しばしば短期間のうちに多量の情報を与えすぎる。だから,学習者は練習時に,言われたことを思い出すのに苦労する。

〈実践的応用〉

  1. 教示の言葉が率直で,直接的であり,多すぎる概念を提示しないときのみ,教示は学習の初期に有益
  2. 最初に最も基礎的なものを強調し,後にあまり重要でないものに言及するように,練習中の言葉の教示を配分する
  3. 最も初歩的なバイオメカニクス的・物理学的・生理学的見地を用いた動作の説明は,練習の初期段階には最小限にとどめることが有益
  4. 不確かなときには,通常言葉の教示を最小限にし,活動的練習に替える。つまり,学生に考え方を獲得させ,それを実行させる
  5. 新しいスキルへの転移を増やすために,教示では既習の運動や概念を使用する(「あたかもハンドボールを投げたように,それを打て」)
  6. ゴルフのバックスイングにおける「まっすぐな肘」のように,学習者が後の練習で独力で照合できる重要な点を明らかにする
練習の基礎的原理

たぶん,明らかに,学習者が新しいスキルを獲得するときには,以前に行っていたこととは異なる何かをすることによって,新しいスキルを獲得する。学習過程では,学習者が運動のパターン形成の何かを変化させることを必要とする。

ふたつの矛盾する練習目標:練習中できるだけ動くこと(performing)と,練習中できるだけ学習すること(learning)

〈実践的応用〉

  1. 授業時間をふたつの段階,つまり学習のための練習段階と,学生が自分の進歩を評価する自己テスト段階にわけ,交互に配置する
  2. 練習段階の目標は,新しい運動パターンを探すさまざまな方法を試みることであり,よく動くという目標を強調しない
  3. 自己テスト段階の目標は,できるだけ動くことであり,その要領を見いだした最も有効な方法を用いる
  4. 繰り返しと退屈を取り除くために,練習段階とテスト段階を交互に交代せよ
  5. 動機を高めるために,学生は自己テストの進歩の記録を取る

それぞれの方法は,練習中にある種の一時的な補助(guidance)を学習者に与える。希望としては,後でこの補助なしのパフォーマンスによって測定されるような学習が高められることである。

  • 補助が練習に適用されたとき,非常に強力で,有効である。すなわち,補助は有力なパフォーマンス変数である
  • 補助が取り除かれた保持テストでは,初期の補助を受けた学習者は,補助を受けなかった者よりパフォーマンスが良くないか,またはいっそう悪くなる。すなわち,補助は有効な学習変数ではない

補助はパフォーマンスをよく促進するから,学習者は松葉杖のように補助を信頼するようになる。すなわち,後で補助がなくなったときに,必要な要素過程の練習を妨げる傾向がある

他方,補助を受けない学習者は,練習中に幾分奮闘を強いられ,習得段階中もうまく行なえない。しかし,この人は補助なしに効果的に行う能力を学習(learn)し,保持テストでは補助された学習者を追い越す

ごく初期の練習では,補助という手続きは有益である。その手続きはスキルの基礎的な特徴を提供させ,なすべきことの概略を示す。学習者に自分なりの方法で最初の試みを開始させる。しかしながら,補助手続きは,やりすぎになりやすい。だから,その手続は,できるだけ早く終わるべきである。

〈実践的応用〉

  1. 初期の学習段階では,学習を助けてスキル・パターン化の問題を克服するために,身体的または言語の補助手続きを用いる
  2. 運動の感覚と力学は,ふつう著しく補助によって変えられ,課題も変化するから,控え目に補助する
  3. 補助に頼ることを避けるために,学習者が独力でスキルを遂行できるようになるとすぐに,補助を停止する
  4. 危険な課題では,傷害を防ぐように補助を行う。しかし,学習者が補助なしにスキルを遂行できるようになるとすぐに,補助を取り除く
  5. 学習者の傷害に対する恐怖心を減ずる補助手続きを用いる。そして,比較的くつろいだ,楽しい練習を与え,いっそう効率的な学習を行う

さまざまな実験からの証明は,メンタル・プラクティス(mental practice)の手続きが実際に運動学習を生み出すことを説得力をもって証明した;他の研究では,メンタル・プラクティスと身体的練習をランダムに入れ替えると,メンタル・プラクティスをブロック練習方式で与えるよりも,むしろ学習にいっそう有効であることを示している;メンタル・プラクティス中の筋電図は微弱な電気活動を示しているが,これらの筋電図は,実際の運動時の筋電図とあまり似ていない。

部分練習(partial practice):分離された単位に課題を分ける;その目標は,これらの練習単位を全体のスキルに統合することだが,それは思うほど簡単ではない;問題はスキルのサブユニットを作り出す方法と,そのサブユニットが全体のスキルに最大限転移するために練習すべき方法である;実際の疑問は,個別に練習される部分が,全体の目標であるスキル全体を学習するために有効であるかどうか,ということ

遂行時間の短い分離スキル:たとえば野球のスイングで,ある時点で次の部分が分離して見えたときには,スキル全体のうちの部分ではなくなる。それは,あたかもスイングを小さく小さく分解していくことが,スイングの部分として特徴づけられている重要な局面を破壊してしまうことになる。すなわち,その分解は動作の基本的な特徴を破壊するだろう。このような部分練習は,全体の課題を学習するためには効果がなく,有害である。;いくつかの実験が示すように,分離課題の部分練習は,課題全体への転移では,もしあるとしても少ない

例えば,ゴルフボールを打つような課題では,フォワードスイングからバックスイングを切り離して練習することは,バックスイングのトップでの動作力学を替える。バックスイングは筋を動的に長くすることによって支配され,その筋のバネ様の特徴はダウンスイングに円滑さと力強さをもたらす。したがって,バックスイングの部分的練習は,これらのバネ様の筋特性の役割を除外し,スキルの全体の文脈における同一のバックスイングとかなり異なっている。

部分練習の原理:

  • 非常に遅く,運動要素の相互作用のない系列課題では,難しい要素の部分学習は非常に有効
  • 非常に速く,プログラムされた動作では,部分練習はめったに有効ではなく,学習に有害でさえある
  • 課題の構成要素が互いに相互作用すればするほど,部分練習の効果はますます少なくなる

1つのスキルのみの練習に長時間かけることは,退屈であり,避けるべき。しかし,学習者が身体の問題(例:筋肉痛)を発言しないなら,1日以上練習期間をあける理由はない。;練習期間内に,試行間の急速を増加させることは,連続スキルの練習をわずかに向上させる。しかし,分離スキルでは最少の効果しかない。;単一の最適練習−休息率はない。つまり,この値は分離課題と連続課題で変化し,運動のエネルギー消費でも変わる。

第9章 練習の組織化と計画

学習目標

  1. 効果的な学習のために,練習をランダム化する原理を理解すること
  2. 一般化を高めるために,練習を多様化する方法に精通すること
  3. 自動性とエラー検出という練習の他の目的を認識すること
  4. これらの諸原理を多数の現実の指導現場に適用すること
組織的な練習

ブロック練習(blocked practice):決められた課題の練習試行が全部修了してから次の課題へ移る。ブロック練習は,他の活動によって遮られることなしに,ひとつのスキルが繰り返して行われるドリルの典型

ランダム練習(rondom practice):課題提示の順序がランダムであり,その結果,いろいろな課題の練習がひとつの練習期間中にまたがって挿入されたり混ざりあったりする

  • ブロック試行条件は,ランダム試行条件よりも練習時において効果的なパフォーマンスをもたらす
  • しかし,保持テストを受けると,ランダム練習で習得を行った被験者はブロック練習の者よりもすぐれている
  • したがって,たとえ練習中の効果はランダム練習のほうが少なくても,学習においてはブロック条件よりもランダム条件のほうが優れている
  • ランダム練習が優位であることは,ランダムおよびブロックの両保持テストにおいてともにあきらかであるが,特に前者において著しい

ブロック練習よりもランダム練習が有効なことは,次のようないくつかの要因によると思われる:

  • ランダム練習は,それまでの運動課題に対する短期的な解を,課題が変化したら忘却させる
  • 短期的解を忘却すると,その課題の次の試行において,学習者は再びその解を発生することに直面させられる。このことが学習者に対して有益である
  • ランダム練習は,学習者に活動の単なる反復を行わせるのではなく,もっと活発に学習活動を行わせるようになる
  • ランダム練習は,いろいろな課題の記憶を一層意味深く区別しやすいものにし,その結果,記憶強度を増加させて課題の混同を低減させる

〈実践的応用〉

  1. 技能練習の最初の1−2試行で,パフォーマンスを急速に向上させるためにブロック練習をする
  2. 練習をはじめてからほんの数試行のあとになるだろうが,一度パフォーマンスが大掴みできたら,ランダム練習に切り換える
  3. もしそのスキルの基準条件自身が(たとえばゴルフのように)ランダムであるなら,ごく初期の練習以外はブロック計画条件を決して用いるべきではない
  4. たとえ基準スキルがブロック条件で行われても(たとえばライフル射撃のように)ランダム練習を用いる;ランダム練習はブロック練習よりもなおわずかながら効果的である
  5. 授業においては,ブロック練習を避けるために,その時間中,数個のスキルをしばしばローテーションとして練習する
  6. ランダム練習は,そのときの練習ではパフォーマンスを低下させるけれども,実際には,学習および保持パフォーマンスを高めることを学習者に説明する
  7. 特に,変化のない反復が行われるドリルは,一般的に学習効果がないので,こういった練習は避けるべき

〈実践的応用〉

  1. プレーヤーが特定の課題のクラス(たとえば投球)を学習するとき,投げる距離,スピード,あるいは方向などの,あるひとつの次元に沿って練習を多様化する
  2. 多様練習での経験は,来たるべき基準スキルのパフォーマンスで経験すると思われるバリエーションの範囲にわたるように構成する
  3. 可能なときはいつでもスキルをランダムな順序で提示し,ブロック的にバリエーションを反復するのを避ける
  4. 課題のバリエーションが運動プログラムの限界を越え,運動のパターン化に明確な変化が認められる時期を感知するために,スキルについて自分が精通していることを利用する
  5. 練習課題のバリエーションが一般運動プログラムの範囲を越えてしまうほどまで,バリエーションの幅を広げないこと
  6. いろいろな目標を達成するのに表面的な特徴(たとえばスピードや大きさ)を変化させるだけでよいように,各バリエーションで同様の基本的パターンを構成するように学習者を仕向ける

ランダム/ブロック練習,および多様/一定練習の計画のあいだの違い:

  • ランダム練習は異なるクラスの課題を含んでいるのに対して,多様練習は単一クラスのバリエーションを含んでいる
  • ランダム練習とブロック練習は,りょうほうともいくつかの異なる課題を含んでいるが,提示の順序が違っている
  • 多様練習と一定練習は,動作の単一クラス内での異なる練習経験を伴う
  • ランダム練習は,動作解の発生を増加させるか,あるいは運動表象の意味性を増加させることによって学習を高める
練習の数多い有益性

練習の主な目標は,必要に応じて何らかのスキルを発揮する能力を発展させることであるが,これとは別に,実際の課題の熟練にはさほど直接関係のない能力も学習者に付与するという利益もある:

  1. 自動性
  2. エラー検出能力(error detection capability)
  3. 転移と一般化の学習

基本的能力の転移はない:たとえば,いろいろな「動作を速める」練習は,すばやいというある基本的な能力を訓練するもので,その結果,そのスポーツ特有の反応をより速くするであろうという期待から,競技者はしばしばそのような訓練を与えられることがある。コーチは一般的なバランス能力を増加するためにいろいろなバランスドリルを,視覚のために眼球運動の訓練を,そのほか多数のものを使用する。そのような基本的能力を訓練する試みは素晴らしいものに響くかもしれないが,一般的には全くうまく作用していない。

概して,体育,スポーツ,セラピーにおけるほとんどの指導プログラムでは,シミュレーターは多くはおそらくその一部分であろう。練習施設には通常厳しい制約があり,安いが実際的なシミュレーターでそのスキルに似せる方法が求められるべきである。シミュレーターは,初期の練習段階で非常に効果的であろう。この段階では,その活動の認知的,意志決定の他の側面において,ルールと方略がシミュレーターで学習される。しかし,運動制御の学習が始まるや否や,特定の基準課題とかなり同一でない限り,シミュレーターの有効性は一般的には落ちる。

多様練習に含まれるのは,たとえばパットをいろいろな距離で練習するように,所定の課題の意図的なバリエーションである。たったひとつのバリエーションだけが練習される一定練習と比較すると,多様練習は保持と一般性を促進するが,特に前もって特殊なバリエーションが練習されていない新奇な状況に対する促進が著しい。

第10章 スキル学習でのフィードバック

学習目標

  1. 種々なフィードバックの分類について精通すること
  2. フィードバックがどのようにして学習を促進するかを理解すること
  3. 学習を促進するためにフィードバックの頻度,タイミング,およびそのないわの役割を熟知すること
  4. フィードバックの原理を多くの指導実践の場に応用すること
フィードバックの分類と機能

内在的フィードバック(intrinsic feedback):行為を行ってその当然な結果として提供される情報

外在的フィードバック(extrinsic feedback):なんらかの人工的手段によって学習者に戻られるもの

結果の知識(knowledge of result: KR):外在的フィードバックに関する特に重要なカテゴリー;KR外在的情報であって,通常,環境目標に対する行為の成功についての言語(あるいは言語化された)情報である

  • もし,学習者が自分自身のエラーに関する知識(内在的フィードバックあるいは外在的フィードバックのいずれからでも)を持っていないならば,練習は,何の学習も生じない
  • しかしながら,KRの形式での外在的フィードバックは,学習を急速にそして永続的に生じさせる
  • 一般に,外在的あるいは内在的ないずれの情報源からでも,エラーについての情報は,学習の生起にとって必須なものである

パフォーマンスの知識(knowledge of performance: KP):ときには運動学的フィードバック(kinematic feedback)と呼ばれるが,学習者が行った直後の運動パターンについての付加的情報である

外在的フィードバックがすること:

  1. 動機づけを生み出す,あるいは一層の努力をするように学習者を励ます
  2. 正しい行為と誤った行為に対して強化を与える
  3. 修正の基準となるエラーについての情報を提供する
  4. 依存性を創り出し,フィードバックを取り除いた際に問題をもたらす

外在的フィードバックについての要約

  • フィードバックの主要な構成要素は,エラーについての情報
  • この情報は,エラーを修正させ,そしてパフォーマンスを改善する
  • フィードバックの継続は,パフォーマンスのエラーを最小に保持する傾向がある
  • 頻度の高すぎるフィードバックは,学習者に依存性を生みだすことがある
フィードバック情報をいかに用いるか

フィードバックは,学習者が制御可能な運動の特徴について行うべき

〈実践的応用〉

  1. 運動結果のフィードバックを与える前に,まず学習者の基本的な運動のパターンの欠陥に注意を集中させること
  2. 学習者の情報処理や記憶の能力に負担をかけ過ぎないために,一度にひとつあるいはおおくてもふたつのフィードバックの情報源に集中させること
  3. 最も重要な部分についてのフィードバックを与えるための助けとなることとしては,スキルに含まれている過程と困難性を理解することである
  4. どの運動パターンの特徴が成功にとって最も重要であるかを決定すること。そして,まずこれらの特徴についてのフィードバックを与えること
  5. 学習者がスキルを磨き洗練しつつあるときは,成功にとってきわめて重要ではない特徴は,学習の後半で強調するまでそのままにしておくこと
  6. 必要な修正について長い説明を避けるために,フィードバックを与える際のキーワードや言い回しを開発しておくこと

〈実践的応用〉

  1. 多人数クラスにおいては,頻繁なフィードバックは不可能であり,各学習者がフィードバックを受けられる練習試行数を最大限にするように懸命に励むこと
  2. フィードバックを伴う試行の中に,動機づけや興味を保持するために,努力や正しい行為についての正の強化のような激励と,エラーについての情報とを混ぜ合わせること
  3. 多人数クラスにおいては,学習者の間を比較的すばやく移動すること。次の学習者に移動する前に1試行あるいは多くても2試行だけフィードバックを与えること
  4. 多人数クラスにおいては,より単純な運動の部分にうちてフィードバックを与えるのを助けるために,アシスタント,ボランティアあるいは他の生徒を利用すると,効果をあげることが多い

帯域幅フィードバック(bandwidth feedback):頻繁なフィードバックの依存性産出効果を避けるもうひとつの方法ーー他には漸減的フィードバック(faded feedback)などーー;指導者はゴルファーに,スイングのトップで許容できるクラブヘッドの位置は20センチの範囲とする,予め定められた正しい運動の小さな範囲に基づいて,情報を与えることができる。その運動が正しい範囲に収まる場合にはフィードバックが与えられないが,その運動が範囲外であるならば,エラーの量と方向を示すフィードバックが提供される。:この利点は,1)副次的結果として漸減的フィードバックを生み出す,2)その範囲内の運動から正の強化としての報酬を受取るのであって,フィードバックが与えられないけれども,学習者は前の運動が比較的良かったことを知っており,それを繰り返す,3)その帯域内にある一軍の試行で情報を取り去ることは,一貫した運動を奨励するので,学習者は,試行ごとに運動を変化させようとはしない。これらの微細な試行ごとの修正を除去することで,パフォーマンスを安定させ,一層効果的で永続的記憶が約束される

要約フィードバック(summary feedback):フィードバックが試行の1セット(たとえば,5試行から20試行)のあいだは与えられないで,そのあとにさまざまな方法で学習者に対して要約される;表面上は要約フィードバックはとくに学習効果がないように見えるが,最近の研究成果では,要約フィードバックが学習にとってとくに効果的であるということを示している;課題の複雑性が増すほど,要約フィードバックの最適試行数は減少する

  • 要約フィードバックは,フィードバック依存性産出効果を防ぎ,学習者に自分独自で実行することを可能にする
  • 要約フィードバックは,どの運動についても修正しようとする学習者の傾向を阻止する。このために運動の一貫性を生み出す
  • 要約フィードバックは,反応産出フィードバックの処理を促進し,一層効果的なエラー検出の能力を導く
  • しかしながら要約フィードバックは,学習者により多くの情報を提供することによって学習を促進するというものではない

平均フィードバック(average feedback):学習者は,自分の得点についてフィードバック情報を受け取る前に,いくつかの試行の間待つ(要約フィードバックの際のように)のであるが,それらの試行についての平均得点のみをそのときに受け取る;

第III部 原理の実際場面への応用

第11章 統合と応用

練習前の準備

私が思うには,最も能率的なクラスをつくるには,学習者の遂行能力によりいくつかの練習のためのグルーピング(grouping for practice)を行うことだと考える

学習段階による練習の組織化
学習の評価

780.11

運動学習とパフォーマンス : 理論から実践へ (大修館書店): 1994|書誌詳細|国立国会図書館サーチ