Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

ベティ・エドワーズ『脳の右側で描け:決定版』河出書房新社

なにかの本の中で本書が紹介されていて,そこで受講者のレッスンを受ける前と受けた後の自画像が並べて掲載されていたんだけど,それがとにかく説得力があった。レッスンを受ける前のは本当によくある(いま自分が描けと言われて描きそうな)もので,受講後のものは(素人からしたら)〈本物〉の絵でしょって思えるレベルのものだったから。

著者いわく,絵を描くのは特殊な能力でもなんでもないと。文を読んだり書いたりするのと同じように基本的な技術というのがあって,そのことを分かっていないから描けないだけなんだと。要するに,左脳が支配的な認知・行動ではなく,右脳が支配的なものにすればいいと。

正直言うと,この右脳うんぬんのくだりは冗長だなと思う。けど,いざ絵を描く話になってくると,具体的で説得力がある。左脳の働きをとめるための手法から始まって,〈エッジ〉の知覚,〈スペース〉の認識,肖像画を描く際のポイント(人間の顔ってこういうプロポーションで成り立ってますよっていう),〈光と影〉,とかとか。

ここに書かれた手法を使って自分が絵を描くのを練習しようとは思わないけれど,でもいちばんの収穫は,どんなことでも上達するための方法論というのはあるんだな,ということ。〈センス〉の問題として片付けがちだけど,そうじゃないんだろうな,と。

NDC(10版) 725 : 素描.描画

脳の右側で描け : 決定版 (河出書房新社): 2021|書誌詳細|国立国会図書館サーチ