Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

スティーヴン・L・マンリー『アメリカ最優秀教師が教える相対論&量子論:はじめて学ぶ二大理論』講談社(ブルーバックス)

パウリの本を手にとって恐れをなしたのでこの本に逃げ込んだのだけど,子供だましのようでいて,よく書かている本だった.というか,特に相対論について,この本に書かれているような基本的なことについて自分は何も知らなかったということを痛感したのであった.

「相対論&量子論」と銘打っているのに,あるいは銘打っているからこそ,この本の第1章は「科学はどのようにして進むのか」となっており,これが最後まで布石になっている.つまり,科学とは「誰かが何かを観察して,それに対して仮説を立て,実験し,そしてその仮説を修正したり放棄したり,ということを繰り返すことで,科学的な理解が徐々に深まっていく」というものだと.しかし科学者も人間であるからには「やることのすべてに人間の思い込みが含まれている」,つまり「ふだん経験している範囲(時間,距離,速度,大きさ)に収まるような予測を立ててしまいがち」になるけれど,上記のような科学の手順があるからこそ,「人間が持つ先入観を越えられるように導いてくれる」のだと.

自然が,人間が心地よく感じる範囲に物事をおさめてくれると期待する理由などまったくありません.

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