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[論文]Calder, et al. "Cat Model Blending" - 3. A Technical Solution

"Cat Model Blending - Techniques and Governance"
Alan Calder, Andrew Couper, Joseph Lo, Aspen (Respectively, Group Head of Catastrophe Risk Management, Chief Actuary and Chief Risk Officer of Aspen Bermuda, and Head of Actuarial Research & Development.)
13 August, 2012

3.1 Tables and Notations
  • 技術的な詳細の話に移る前に,データテーブルについて説明をしておく.
  • Year Event Table(YET)はもっともシンプルなかたちのテーブルで,以下の要素からなる:
    • SimulationYear(整数).n回目のシミュレーションであることを表わす.
    • LossNumber(整数).n回目のシミュレーションの中で起こるCatイベントに振られる番号.そこでk個のイベントが起これば,LossNumberのフィールドは1からkまで走る.
    • ComponentName.シミュレートされた各イベントに対し,ロスの額が参照されるべきコンポーネントの名前.
    • EventID.シミュレートされた各イベントに対し,イベントセット内のイベントを特定する.
    • SUPercentile(0から1までの実数).シミュレートされたイベントのロスの額のパーセンタイル値.
  • ELT(Event Loss Table)は,アクチュアリーがCatロスのシミュレーションを行なう際に,最も馴染み深いであろうテーブル.
    • EventID.全体のイベントセットの中から引かれる.各EventIDは,特定のCatイベントを表現している.
    • Rate.各イベントが1年のあいだに発生する確率.絶対的な発生確率であることもあるし,相対的な数値(他のイベントの発生確率と比較して)であることもある.絶対的な発生確率である場合,そして各イベントが独立して起こると仮定した場合,解釈が2種類あって,ひとつはベルヌーイ分布に従う(だから年に1回のイベントが起こるか否か),もうひとつはポワソン分布に従う(だから理屈上は同じイベントが1年に複数回起こりうる).通常はポワソン分布に従うと仮定する.各イベントが独立ではない場合は,負の二項分布を仮定することが多い.
    • LossAmount.各イベントに対する損害額.脆弱性とファイナンシャルのモジュールから算出される.
    • イベントごとのロスには不確実性が存在する.これを二次の不確実性(secondary uncertainty)と呼ぶ.ちなみに一次の不確実性は,そのイベントが起きるかどうか.その分布を表現するために,期待値・標準偏差・最大損害額といったパラメータが与えられている場合もある.
  • 複数のELTを統合する場合:
    • EventIDが同じからELTが違ってもRateは同じはずだから,統合ELTではそのRateを各イベントの発生確率として使う.ELT間でRateが異なっている場合は,その理由を調べる.
    • LossAmountについて,統合ELTにおけるひとつのイベントの期待値や最大損害額は,各ELTにおけるそのイベントの期待値や最大損害額の和になる.
    • LossAmountの標準偏差に関しては,リスクの分散の様子によって取り扱いが変わってくる.
  • YLT(Year Loss Table)形式のテーブルは,特にクラスタリングイベントが起こるペリルにおいて,広まりつつある.ELTにない長所として,複数のイベント間の結びつきを表現できることがある.SimulationYear,LossNumber,LossAmountの3つから構成されるが,最初のふたつはYETの,最後のひとつはELTのそれらと同じ.
  • 複数のYLTを統合する場合は,SimulationYearとLossNumberをマッチさせる.
3.2 Standard Agreed Blend
  • 加重平均をとる際のウェイトの選択は,サイエンスというよりアートの要素が強い.(Cook, 2011) はスコアリング・アプローチを提唱し,(Major, 2011) もまた別の提唱をしている.その選択は難しいが,
    • 明らかに劣るモデルに対しては,ゼロの重みづけをすることがありうる.
    • 同等の重みづけ(2つのモデルの場合は50:50)をすることがありうる.これは,どのモデルも同等に良いと評価されるか,あるいはひとつのモデルにより多くの重みを配分する積極的な理由が見当たらない場合に採用される.
  • シミュレーションの回数の決定について,
    • シミュレーション回数を増やすとシミュレーションエラーが減少する(回数Nの平方根に反比例).
  • p = 0.5% とした場合の,二項分布のシミュレーションエラーの信頼区間(再現期間による).
  • ELTからYETを作る際は,通常はモンテカルロ・シミュレーションによって行なわれる.YLTからYETを作る作業は単純.
  • 二次の不確実性を契約の前に適用するか契約の後に適用するかによって,結果にはかなりの差が出る.
  • 二次の不確実性の相関関係について,もっとも保守的なスタンスとしては,各イベントについて,すべてのポートフォリオが完全に相関しているというものだが,まったく非現実的であるというわけでもない.例えば,フランスの Windstorm Lothar や,ニュージーランドクライストチャーチにおける地震のような,エクストリームなイベントのような場合.
  • (Cook, 2011) では,シミュレーションレベルでのFrequencyブレンディングを提唱している.
  • イベントのマッチングについて.モデルAとモデルBをブレンドする場合,理論上はAからのイベントとBからのイベントをマッチさせることもできるかもしれないが,正確に行なうのは事実上不可能かも.この場合,イベントをグループ分けしてマッチングさせるということもありうるかも.
  • シミュレーションエラーは,YLTのときも起こりうる.
3.3 Bottom-up adjustments
  • ボトムアップの調整では,各ポートフォリオの損害額を調整することを目指す.損害額を一様にスケールする場合もあるし,再現期間ごとに異なる値でスケールする場合もある.
  • 一様にスケールする場合でも,その理由を記録しておくことが(内部監査等の理由により)大事.スケールする理由としては,エクスポージャーの増加,データクオリティの調整,ノンモデルドロスの調整,経験の反映,などが挙げられる.
  • 分析の結果,ある再現期間から下の損害額については経験により信頼度を置き,それより上の再現期間でブレンディングを行なうということもある.
  • OEPを調整する方法と,FrequencyとSeverityに分解してSeverityを調整する方法があるが,Catの世界ではより理解されやすいOEPを調整する方が望ましい.
  • 再現期間がリモートなところでは,SeverityカーブとOEPカーブ(そしてAEPカーブ)は近づく.リモートなところでは,ひとつ大きなCatロスが支配的になるから.
  • スケールするパラメータを線形補完することで,調整後のOEPカーブをスムーズにできる.
Contents
  1. Introduction
  2. Catastrophe Model Blending
  3. A Technical Solution
  4. Governance
  5. Final Words
  6. Works Cited