Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

トム・ヴァンダービルト『となりの車線はなぜスイスイ進むのか?:交通の科学』早川書房

期待していたような「交通の科学」の本ではなかった(エンジニアリングというよりは心理学的寄りだった)し,洋物の本でたまにある,「なんか構成がよく分からなくて話題が散発的に続いている」感じの本であった。

タイトルの「となりの車線はなぜスイスイ進むのか?」に対する回答は,これでした。

交通は,理由は後で説明するが,えてしてアコーディオンのように働く。渋滞のように流れが悪くなると,車の流れが「圧縮」する。一方,加速し始めると,蛇腹が開くように,伸びていく。道路上では停止と発進が不規則に発生するから,こうした変化は車線ごとに異なるタイミングで起きる。蛇腹が開いた車線側の車は,となりの車線を尻目にあっという間に追い越していく。だが,次の瞬間には,立場が逆転しているかもしれない。となると,となりの車がすいすいと進んでいく様子を混んだ車線から眺める時間の方がずっと長くなる道理である。さらにいけないことに,前の車との車間距離が詰まっているほど,そして横の車線を見ることが多いほど,自分が追い抜かされているという幻想はつのる。

ドライブカムの話は面白かった。自分は思っているほど上手いドライバーではない。結果的に事故がなかった運転であっても,ドライブカムでその運転の様子を振りかえってみると,実は事故になってもおかしくなかった程度の「ヒヤリハット」が確認される,というもの。

537.8

となりの車線はなぜスイスイ進むのか? : 交通の科学 (早川書房): 2008|書誌詳細|国立国会図書館サーチ