Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

春名幹男『ロッキード疑獄:角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』KADOKAWA

力作。長期間に及ぶ丹念な取材・資料の読みこみによって,ロッキード事件の「真相」に近いところをできるだけ解き明かしていく。惜しいのは,改行の多い文章と,たまに挟まる著者の苦労自慢――これらのせいで,文章の信憑性にミソがついている。

著者の見立てでは,ロッキード事件で田中角栄が逮捕されたのはキッシンジャーの描いた筋書き。というのも――大雑把にいえば――田中による日中国交正常化やアラブ外交がキッシンジャーの気に食わなかった上に,米国におけるロッキード事件の資料のうち何を日本に共有して何を共有しないかは,当時国務長官だったキッシンジャーのさじ加減によるものだったから。一方で,児玉誉士夫にも多額のカネが渡っているが,こちらのルートの方は――究極的に日米安保をゆるがす可能性があるので――米国の意図によって闇に葬られた,つまり田中がスケープゴートにされたのだというのが,著者の分析。

326.21

ロッキード疑獄 : 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス (KADOKAWA): 2020|書誌詳細|国立国会図書館サーチ