Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

井田良, 佐渡島紗織, 山野目章夫『法を学ぶ人のための文章作法』有斐閣

読んだのは初版の方。「法的文章以前に普通の日本語の文章を書くのもままならない」的な人も読者として意識しているのにも関わらず,いきなりハイデガーとかの哲学者の話を持ち出すの,ミスマッチじゃないか?

読みたかったのは〈及び〉と〈並びに〉の違いとかそういうやつだったけど,そんな下世話な興味に応えるものではなかった。3部構成で,最初が「文章とは何か」っていう理論的なもの,次が一般的な文章作法のようなもの,最後が法的文章を例にとったケーススタディーといったところ。上記のように,最初の理論的なものは理論的すぎるし,一般的な文章作法は一般的すぎるし残り1/3になってようやくそれっぽいものになる。「法律のことは分かってるのに文章のことは分かってない」人を対象にするからこうならざるをえないんだろうけど,そのチグハグさが,法曹界にいる人間のいい象徴といった感がある。

チグハグさといえば,「COLUMN 11 条文はリマインドしない」ーーこれは3人の著者のうち誰が書いたのか不明だがーーで,要はロースクールで学ぶ社会人に抗議を受けたと。その抗議とは,レポートをいついつまでに出せというルールを1ヶ月前に告げたけど,締め切りまで1週間を切ったからリマインドした方がいいんじゃないですか,というもの。これに対して著者は,「法律表現の特色というよりも,条文起草の実務というべきであろうが,リマインドのルールというものは考えられない」のだと。つまり「条文起草においては,論理的に意味が重複する規範提示はしない,という約束がある」らしいんだが,これって文章のレベルの混同じゃない? 法曹界のルールを一般世界に持ち込むことでミスコミュニケーションを起こしているというか,周囲をいらっとさせているというか。法律に関わる人間のいやーな面を改めて見させられた感じがする。

320.7

https://iss.ndl.go.jp/sp/show/R100000002-I027772073-00?lat=&lng=