Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

高田明典『難解な本を読む技術』光文社(光文社新書)

ここでいう〈難解な本〉とは現代思想の翻訳本――デリダとかドゥルーズとかガタリとかそういうやつ――であって,本書はそのエッセンスの入った離乳食を与えてくれるもののではなく,あくまでそれらの本を〈読める〉あるいは〈分かる〉ようになるための技術や方法論やアプローチの仕方を授けてくれるもの。

考え方のひとつとして,読もうとしている本のタイプを見定めて,それに沿った読み方をすることが大事だと。そのタイプとは,〈閉じている本〉か〈開いている本〉か,〈外部参照〉が必要な本かそうでない本か,〈登山型〉の本なのか〈ハイキング型〉の本なのか,〈批判読み〉をすべきか〈同化読み〉をすべきか,というもの。

本屋の〈棚見〉の仕方についても詳しく書いているのは面白い。自分はもう大きな書店に行くことはなくなってしまったが,ひとつの分野をつきつめるためには,それが必要なんだろうな。

そして本読みの方法としては一度目は〈通読〉,二度目は〈詳細読み〉になるが,どのタイミングでそれらを分けるか,つまり一冊まるごと通読したあとに詳細読みをするのか,あるいは章ごとにそれを行なうか,それも本書の最後の方で〈代表的難解本ガイド〉というかたちでさまざまな本が紹介されているが,そこで詳しくガイダンスがなされている。そして何より〈読書ノート〉ですね。ノートのとり方もまた詳しく解説されているのだけけど,

知識は,それを格納するための容器が準備されているときに効率的に習得されるのだ,ということを意識して作業をすすめることが大事です。

という一文が印象的。(自分にとってはそれがこのブログだったりツイッターだったりするわけだけど,ちゃんとノートになっているかというとそうでもないよなぁ)

ということでいろいろと勉強になった本なわけですが,そもそも自分はこういう〈難解な本〉を読みたいのかどうかっていう問題ね。それはつまり,そういった〈難解な本〉に書かれている問題を自分の中に問題意識として持っていてそれを解決したい/考えるための糸口がほしいのかどうかっていう。どうもそうではないと思うんだけど――スピノザとかフーコーとかソシュールとかジジェクとかは面白そうだなぁと思ったけど――,じゃあなんでこの本を読んだかっていうと,やっぱりその手の本にある種の憧れがあるからなんだろうね。ドゥルーズとかデリダとかなんだかかっこいい,みたいな。それって結局,ニューアカの影響を少なからず受けてるってことになるんだろうけれど,それを自覚するとまたなんとも自ら香ばしさが漂うのが感じられるというか……。

019.12

難解な本を読む技術 (光文社): 2009|書誌詳細|国立国会図書館サーチ