『正しい本の読み方』に比べれば丁寧に書かれているけれど,『本を読む本』に比べれば内容が薄い,というか,対象としている人のレベルが低い。いかんせん,「本書では,本がなかなか読めないと嘆く人に,現状を変える方法を伝授」するのだ。本を読む時間を作れとか,「音楽的」じゃなく「絵画的」な読書(アタマから通して鑑賞するんじゃなく自分な好きなところをつまみ食いする)でいいとか,途中で読むのをやめてもいいんだとか,そういう話が本書の冒頭。
なんで「理科系の読書術」なのかというと,著者いわく「国語や歴史が不得意だった私が,理系人の代表として,必要に迫られて獲得した読書のノウハウを開示したことによる」であったり,「私は,理系には本質を抽出するための合理的な知的ノウハウがあると,かねがね主張してきた」であったり。
ということで,第2章は「難解な本の読み方」,その「理系的な知的ノウハウ」とやらを使って難解な本を読んでいくわけだけど,ノウハウっていったって「棚上げ法(わらないことを無理に理解しようとしないでとりあえず先に進む)」とか「要素分解法(大きな・難しい問題を,小さな・解決可能な要素に分解する)」とかで,ふーんって感じ。
最後の方は「本の集め方」だったり「読書メモの取り方」だったり「フロー型の読書人生」だったりとか,読書にまつわる周縁的な話。しかし,「とりあえず本は買って読め」と言っておきながら,舌の根も乾かぬうちに「いや,これからはストックじゃなくフローの時代なんだ」とか言って,どっちなんだ。
うーん,鎌田浩毅。これだと粗製乱造としか思えないぞ……。
019.12
理科系の読書術 : インプットからアウトプットまでの28のヒント (中央公論新社): 2018|書誌詳細|国立国会図書館サーチ