橋爪大三郎『正しい本の読み方』の中で紹介されていたやつ *1。著者はロゲルギストの中の人のひとり。ロゲルギストの本はいまいちだと思ったけど *2,この本は面白い。
本書で「理科系(の文章)」が意味するのは,読者の心を動かす情感豊かな文章のことではなくて,論理と内容で読者に情報を的確に伝える文章――著者いわく「読者につたえるべき内容が事実(状況をふくむ)にと意見(判断や予測をふくむ)にかぎられていて,心情的要素をふくまないこと」――のこと。ということで,本書で紹介されているメソッド――マクロ:主題の選び方からミクロ:約物の使い方まで――は,理科系の論文作成のみならず,仕事の文書にも大いに応用が可能だ。そして著者は,そのような文章を書くときの心得は,
- 主題について述べるべき事実を意見を十分に精選し,
- それらを,事実と意見とを峻別しながら,順序よく,明快・簡潔に記述する
ことであると要約している。
目標規定文
著者は,「本文を書きはじめるよりも前に,自分がそこで主張するつもりのことをまとめてみるべきだ」と述べ,その文を「目標規定文(thesis)」と呼んでいる。つまり文章を書きはじめる前に結論を出すことに等しいが,「まず目標規定文を書き,それからその目標に収束するように文章ぜんたいの構想を練ることが必要」「目標規定文は,執筆の途中で材料の取捨選択に迷ったときにも判断をたすけてくれるだろう」と,著者は述べる。
パラグラフとトピック・センテンス
日本人はパラグラフに関する意識が希薄だと著者は述べているが,「パラグラフにふくまれるいくつかの文はある条件をみたしていなければいけない」という。
パラグラフには,そこで何について言おうとするのかを一口に,概論的に述べた分がふくまれるのが通例であり,これを〈トピック・センテンス〉という。そして,パラグラフにふくまれるその他の文は,a) トピック・センテンスで要約して述べたことを具体的に,詳しく説明するものか,あるいは b) そのパラグラフと他のパラグラフとのつながりを示すもの でなければならない。
わかりやすく簡素な表現
- 文は短く:読みやすさを損なわない範囲で,文章は可能なかぎり短く
- 格の正しい文を:主語と受けの言葉をしっかりと対応させる
- まぎれのない文を:意味が一義的に定まる/理解できる文章にする
- 簡素
- 読みやすさへの配慮:字面の白さ(無駄に漢語・漢字を使わない),受身の文を避ける,並記の方法に留意する
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