Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

北村滋『情報と国家:憲政史上最長の政権を支えたインテリジェンスの原点』中央公論新社

「北村滋」といわれてもピンとこないけど,「北村前国家安全保障局長」という字面には多くの人が見覚えがあるはず。「九年半以上もの間,内閣情報官及び国家安全保障局長として国の安全保障に深く関わ」った北村の初の著作ということで期待したが,結果は肩透かし。

「このボリュームで(516p)でこの値段?(3000円)」と思ったけど,「これまでに書き散らかしてきた論文を取りまとめ」たものと知って,納得した。これだけページ数がある中で著者のインタビュー(北村が聞く側ではなく聞かれる側)があるのはおかしいし,それが本書内でいちばん面白い――あるいは読みたかったものに近い――というのも,何か間違ってるだろう。

要するに,白川方明『現代の金融政策:理論と実際』*1のようなもの――組織のトップとしての体験と深い考察に力強く下支えされた包括的な理論――を期待していたけれど,そうではなかったという話。取りまとめられた各論文も,いかにも役所文書という感じ。よくまとまってはいるけれど,文章としての面白さは希薄だし,各章が有機的につながってこない。

391.6

情報と国家 : 憲政史上最長の政権を支えたインテリジェンスの原点 (中央公論新社): 2021|書誌詳細|国立国会図書館サーチ