Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

杉山通敬『中部銀次郎 ゴルフの極意:心のゲームを制する思考』日本経済新聞社(日経ビジネス人文庫)

アマチュアゴルファーが「もしかしたら自分のゴルフにも活かせるんじゃないか」と期待が持てるような〈名言〉が散りばめられている。

「ゴルフでは起こったことに鋭敏に反応してはいけない」 「すべてのストロークは等価である」 「目的のないショットは1打もない」 「コースにいじめられないように,いじめられないようにプレーを進めていけば,自ずと設計者のいわんとするところは見えてくる」 「水には起伏がないので距離感が掴みづらい。私の場合は短く見える」 「女性(男性)によって性感帯が異なるようにホールの”性感帯”も異なる。どこを攻めれば”その気”になってくれるか,人によって違うようにホールによっても違う」 「プレー中は何があっても,やわらかくやり過ごす。だけど(ミスをしたときは)宿題を出されたわけですから,その解答を練習で出しておかないと教育上よくない」

著者と中部との距離が近く,申し訳ないが本條の本との違いは歴然。

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とはいえこの杉山も,たまに〈我〉が出て,読んでいて引っかかる。たとえば中部が「フェアウェイもグリーンもとにかくセンターを狙う」,あとは何回かプレーしているうちに右がいいとか左がいいとかは「プレーすれば分かってくる」と述べたあとで,杉山はこう絞める:

中部の戦略はいたって明快である。技術水準が高いからなのだろうが,この考え方は大方のゴルファーにも参考になるのではあるまいか。/古代ローマの英雄,ジュリアス・シーザーを思わせるものがある。/「われ来たり,われ見たり,われ勝てり」

うーん,そうか? 分からなくもないけど,ぴしゃりとハマっている感じもない。せっかくの〈中部の世界〉に浸っているのに,それが壊される。

783.8

中部銀次郎ゴルフの極意 : 心のゲームを制する思考 (日本経済新聞社): 2005|書誌詳細|国立国会図書館サーチ