池谷裕二の著書は初めて読んだけど,面白くて一気に読み進めた。あとがき(「ブルーバックス版刊行に寄せて」)にあるように,池谷の「テンポのよさ,潔さ,自身と勢い」がある。
僕も小学校高学年のときに大脳生理学に興味があって,いくつか本を読んでみたけれど,これほどのワクワク感をもって読んでいたかなぁ。もちろん,当時の僕と今の僕とは別物だから単純な比較はできないけれど……,当時の自分がこの本を読んでいたら,どうなっていただろうか。
この本を読んで,脳のミクロなメカニズムは分かった。というか,「分かった」という気に大いにさせてもらえる。だけど,マクロな視点で見た場合,あるいは「意識」の問題を考えた場合,まったく分からない。「分からなさ」がますます深まる。
本のどこかで池谷が述べているように,大脳生理学は「脳を使って脳のことを考える・調べる」というロマンチックなもの,なわけで,だからこそ面白いし,絶望的な気分にもなるし,そこに限界があるような気もするし,まぁでも「ロマン」だよな。
にしても,他のサイエンスの本は「数式をできるだけ使わずに」云々とかいって,結局数式を使った方がいいじゃんって気がするだけなのに,この本にはそんな断り書きもなく(付録には出てくるけど),使う必要も感じさせず,いろいろと「分かった」気になって,それがまた大脳生理学の面白いところなのか,あるいは池谷のすごいところなのか。