Dribs and Drabs

ランダムな読書歴と音楽にまつわる備忘録

河森直紀『競技力向上のためのウエイトトレーニングの考え方』ナップ

〈練習〉と〈トレーニング〉とを混同するなって話で,特に著者が〈誤った競技特異的トレーニング〉と呼ぶもの――つまり練習に近づけたトレーニングあるいはトレーニングに近づけた練習――は無意味だよということを,全力で主張している一冊。

1. 練習 vs. トレーニング

練習の主目的は「技術」の向上,トレーニングのは「体力」の向上。

技術を身につけるためには体力が必要であり,体力を生かすためには技術が必要。

2. ウエイトトレーニングの定義

本書で「ウエイトトレーニング」と呼んでいるものは,筋力の向上だけでなく,筋肥大・柔軟性の向上・身体組成の改善・爆発的パワーの向上など,さまざまな目的のために使えるトレーニングです。

本書においては,バーベルやダンベルなどの重量(=ウエイト)を中心とした抵抗を外的負荷として用いてアスリートと身体に刺激を与え,体力の向上を図る目的で実施する活動のことを「ウエイトトレーニング」と呼ぶことにします。

3. アスリートがウエイトトレーニングをするべき理由

アスリートがウエイトトレーニングをするべき理由は「勝つ」ため。ウエイトトレーニングそのものは「勝つ」という目的を達成するための手段にすぎない。

練習だけで勝てるなら,ウエイトトレーニングをする必要はない。

練習だけでは勝てないから,勝つ確率を少しでも高めるために,練習だけではできないことを,練習から一度離れて,練習とは別に実施するのがトレーニングの役割。

「練習をしていれば競技に必要な体力はつく」というのは,多くの場合,幻想にすぎません。

「ウエイトトレーニングを競技に近づける」というアプローチを,私は「誤った競技特異的トレーニング」と呼んでいます

練習だけをやるよりも,ウエイトトレーニングを実施したほうが,「より健康的に」「より効率的に」「より高いレベルまで」「練習とは異なる形で」体力を向上させることができる

4. トレーニングは競技力向上にどのように貢献できるか

トレーニングを実施して体力を向上させると,「アスリートとしてのポテンシャルを広げる」「ケガしづらい身体づくり」という2つのルートで競技力向上に貢献することができます。

トレーニングによる体力向上を競技力向上に結びつけるためには,「トレーニング効果の転移」というもう1ステップが必要。

このトレーニング効果の転移というステップを飛ばして,トレーニング効果を競技力向上に直結させようと考えてしまうのはとても危険です。なぜなら,そのような考え方は,「トレーニングを競技に近づけていく」とか「練習そのものにウエイトトレーニングの要素を含める」といったアプローチ,つまり「誤った競技特異的トレーニング」に繋がりかねないからです。

私が考える適切なウエイトトレーニングでは,可動域を大きく使い,エキセントリック局面をコントロールし,フリーウエイト中心に体幹部分を安定させた状態で股関節や肩関節で大きな出力をするようなやり方をするので,自然と「ケガをしづらい身体づくり」にも繋がります。

5. トレーニングが競技力向上に繋がるまでのプロセス

体力以外にもさまざまなよういが競技力に影響を及ぼすので,トレーニングだけうまくいったとしても勝ちに繋がるとは限らない。

6. トレーニングの原則

Train muscles for movements.

競技力向上のためのウエイトトレーニングの考え方 (ナップ): 2020|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

780.7 : スポーツ.体育