ABI,今回はNon-modelled Riskについて
ABI(Association of British Insurers)がリリースした,“グッドプラクティス”のガイド。数年前はCatモデリングについて(‘Industry Good Practice for Catastrophe Modelling: a guide to managing catastrophe models as part of an Internal Model under Solvency II’)だったけど,今回はCatモデルの範疇にはないリスク,いわゆる「ノン・モデルド・リスク」について。特段目新しい点はないけれど,この問題に対する今の共通理解が的確にまとめられており,(再)保険者がこの問題を考えるときのよい実践的なガイダンスになるでしょう。
Association of British Insurers "Non-Modelled Risks: A guide to more complete catastrophe risk assessment for (re)insurers"
https://www.abi.org.uk/~/media/Files/Documents/Publications/Public/2014/prudential%20regulation/Nonmodelled%20risks%20a%20guide%20to%20more%20complete%20catastrophe%20risk%20assessment%20for%20reinsurers.ashx
抜粋
- 「ノン・モデルド・リスク(Non-modelled risks)」を以下では「NMR」と略す。
- 2011年のタイ洪水が,ベンダーモデルでは表現されないCatモデルの認識の重要性を浮き彫りに。
- 日本の地震リスクはモデル化されていたが,2011年3月時点で津波による損害は考慮されていなかった。
- NMRをここでは,「Catイベントの結果として起こる損保のロスを引き起こす可能性のあるすべてのソースで,会社が現在使用している既存のCatモデルでは明示的に捕捉されていないもの」と定義する。
- アグリカルチャー,賠償責任,生保は,このドキュメントの対象外。
- モデルの不確実性(moder uncertainty)も,このドキュメントの対象外。
- NMRには4つの種類が。(1)地域やペリルがモデルの対象外,(2)地震のあとの津波のような2次のペリル(secondary perils)がモデルの対象外,(3)保険種目がモデルの対象外,(4)保険のカバレッジがモデルの対象外。
- NMRの担当を会社のどの部門が担うかを決めるにあたり,どのようなスキルセットが必要で,だれがそのスキルを持っているかを見極める必要がある。
- そのスキルセットには,エクスポージャー管理・ロスモデルの開発・モデル評価・クレームヒストリーの分析,が含まれる。また,現在使用しているCatモデルについて(その限界も含め)精通していることが必須。
- NMR管理は,4つのステップからなるサイクルで行なう。(1)コンテクストの設定(どのような目的のでNMR管理を行なうか),(2)リスクの特定,(3)リスクの分析,(4)リスクと重要性の評価。
- すべての過程において,NMRの評価には何が含まれていて何が含まれていないか,どんな不確実性が残っているかを強調することが重要。
- NMRの特定には,非常に一般的に言えば,3つの方法がある:(1)今のエクスポージャーをベースに,(2)過去ロスをベースに,(3)専門家の判断(expert judgement)
- 種々の制約がある中で,「重要性」という観点を忘れないこと。
- ウォーターフォールチャート(滝チャート)で,特定のロスの中に存在する「ノン・モデルド」の要素を可視化する。
- 「エクスパート・オピニオン」の提供元には,社内の専門家だけでなく,学者,外部のコンサルタント,出版物,セミナーなどがある。
- エマージングリスク委員会の設置や,ブレインストーミングのような発想法で,シナリオを検討することが,有用なこともある。
- 会社における通常の業務プロセスは,既知のリスクや既知の欠点に対処するのには優れているが,新しいリスクのソースを積極的に探し当てるという段になると,同じようには機能しないこともある。
- ヒューリスティックに留意すること。
- NMRの定量化には,4つの方法がある:(1)専門家のジャッジメント,(2)アクチュアリアル・統計的方法,(3)地理的方法(リスクのマッピング等),(4)Catモデルの調整と開発。