Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

大迫傑『走って、悩んで、見つけたこと。』文藝春秋

こないだのオリンピックの数週間前からだったように記憶しているんだけど,Nikeのアプリで大迫傑の顔が出るようになって。当時僕は大迫のこと全然知らなかったから,「またナイキのルッキズムなお眼鏡に叶ったアスリートかよ」ぐらいにしか思ってなかったんだけど,調べていったら,なんだか他の日本人アスリートとはちょっと違ってそうだぞと気づいた。日清食品に所属しながらオレゴンプロジェクトに参加してたりとか…。んで,当のオリンピックでは6位入賞。かっこいい。いつの間にか僕は大迫のファンになっていた。

ということで手に取ったこの本。『The Art of Learning』なんかに比べればボリュームも内容も薄いんだけど,大迫というアスリートの人となりとか,競技への取り組み方のエッセンスはよく理解できた。要約するなら「とにかく練習しろ,自分で考えろ,言い訳するな,ポジティブに捉えろ」ってことになるんだろうけど。

印象に残ったエピソードとしては,高校は佐久長聖を選んで,それで他に勧誘された高校の監督に連絡を入れたとき,それまでその人はいい対応をしていたにも関わらず,そのときは「あんまり大人をなめるんじゃないよ」と言い放ったとか,それで当時の大迫は「選手には都合の良いことを言っていても,結局は自分たちのことが大事なんだ」と感じたとか。大学時代も駅伝が好きじゃなかったし,駅伝に対しては「選手はただの使い捨てに過ぎないんじゃないか」と思っていたからこそ,「駅伝だけに力を入れているような印象の大学には行きたく」なったということで,最終的に早稲田を選んだとか。あとは日清は所属している大迫がナイキ・オレゴン・プロジェクトに参加することを許可するだけでなく協力もしてくれて,それに対して大迫は「今でも本当に感謝している」とか。

そのオレゴン・プロジェクトも

初めてナイキ・オレゴン・プロジェクトを見学したときはすごく親切にしてもらいましたが,それはビジターに対しての親切さであって,練習生になって,いざ内側に入ったらものすごくシビアな世界でした。特にナイキ・オレゴン・プロジェクトは,そんなにフレンドリーでもアットホームでもないチームです。英語ができないこともあって,周囲がすごく冷たいと感じることも多かった。

ということで,こういうのが強さの秘訣のひとつなんだろうな…。ナイキの硬派な側面とでも言えるのかしら。

最後にQ&Aがあって,ここが大迫のキャラクターが強く出ているところ。モチベーションを保つためにしていることはあるかという質問には,「モチベーションは保つものではなくて,日々湧いてくるものじゃないでしょうか。ひとつじゃなくて,色々なところにモチベーションを持てるようになるといいですね」。どうしても練習したくない日ってないかという質問には,「したい,したくないではなくて,必要か必要じゃないかで考えています」。3時間を切りたい市民ランナーがやるべき大迫流トレーニングはあるかという質問には,

もし3時間を切るための特別な方法がありますという人がいたら,それは嘘です(笑)。サブ3を目指しているなら,インターバル,距離走,ペース走の基本的な知識はあると思うんですよね。だとしたら,+αはないので,地道に真面目に走ってください。

これなんだよね。やるしかない。Just Do It。

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