Dribs and Drabs

書評じゃなくて,ただのメモ

魯迅『阿Q正伝・狂人日記:他十二篇 吶喊』岩波書店(岩波文庫) 923

自序

狂人日記

孔乙己

明日

小さな出来事

髪の話

から騒ぎ

故郷

阿Q正伝

端午の節季

白光

兎と猫

あひるの喜劇

村芝居

訳注

『吶喊』について

狂人日記/ 中国の古い社会制度、とくに家族制度と、その精神的支えである儒教倫理の虚偽を曝露することを意図している点では、当時の新思潮と共通の認識に立っていた。ただこの作品では、それを人間が人間を食うことへの恐怖感という感性的な形でとらえ、かつ、作中人物の「私」が被害者であると同時に加害者であるという、追いつめられた罪の意識に貫かれている点が、他の同時代者に見られぬ深刻さであった。一方、形式上にも、当時提唱された口語の平俗さにあきたりない気持があって、わざと破壊的な文体を試みていることも、この作品の特徴である。/ 狂人の手記という着想は、ゴオゴリから得ているらしいが、内容はむしろ「狼は狼を食わぬが、人間は人間を食う」というガルシンの思想に負うところがあるように思われる。ともかくこの作品は、当時の新世代に衝動を与えた。そして名実ともに近代文学の出発点となった。

阿Q正伝/ (…) 阿Qという、おそらくこれ以下はあるまい最下層の人間を主人公にし、それを縦横無尽に活躍させることによって、巧みな布置の中に農村社会(ひいては全体社会)のさまざまな人間タイプの思考や行動の様式を、浮き彫りにしている。阿Qは、作者が少年時代に実地に見たルンペン雇農がモデルになっているという話だが、作中人物の阿Qは、それとは一応別に、作者が長いあいだ心中にあたためていて出来あがったイメージだという感がする。 (…)この小説の評価は、時代とともに変ってきている。主人公の阿Qもさまざまに解釈されている。 時に応じて絶えず問題を提供する点も、中国の近代文学中随一の作品である。

阿Q正伝・狂人日記 : 他十二篇 吶喊 (岩波文庫) | NDLサーチ | 国立国会図書館

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